投稿者「森分福」のアーカイブ

忘備録 #02 “軸足 sung by じゆん”

意図せぬ嬉しい出会いがあり、ビデオまで制作した”軸足”ですが、前回書いたように、1曲目の”おもいの軸足”をさらに発展させた、というか思いつくまま弄り倒したような曲になりました。これをアルバムのリードトラック的なものとして位置付けたために、他の曲より多く聴いていただいたからか、何人かの方に転調が多くてどこに行くかわからない、というような感想をいただいたりしましたが、今考えると曲調が歌詞の内容に影響したかなあ、とも思いますし、歌詞が曲の流れを規定したところもあるかもしれません。他の大抵の曲はあらかた出来上がった構成に歌詞を当てはめたのですが、これはほぼ詞曲同時進行だったので、互いに影響しあってる(もしくは干渉しあってる)ところがあるかなと、今となっては感じられます。

Aメロはマイナーコードで皮肉っぽく、Bに移るとメジャーに流れて少し強気になり、サビ部分はサビらしく少し大きなスケール(もしくは大仰)な感じにできたかなと思います。

また、1コーラス目は軸足=バスケのピボットと言う身近な例、2コーラスで突然地軸などとスケールの大きな話を取り上げてみました。軸、軸、軸といえば。。?という考えでの思いつきなので、特段地球環境とか、そういう問題提起ではありません。今になって考えると、一歩引いた視点(一歩どころではないですね)に移っていく脈絡なくのなさ、思考の飛躍は、モチーフは決めているもののはっきりしたテーマ性があるのかないのか判然としないまま何度も推敲を重ねた結果なんだろうなと思っています。文才の無さを諦めの悪さでカバーしているということですね。

で、サビですが、まあまあサビっぽいメロディーと展開かなあと思いましたので、「ソウゾウ」を使って言葉遊びにしてみました。

2コーラス目からは、曲のテーマに少しでも近づければと努力してみましたが、シンプルに片付けたくないという気持ちと、考えすぎて逆に独りよがりになってしまう焦りと、お互いが相剋してなかなかストンと落ち着く感じがありませんでした。

最終的には「善良」というワードに頼って無理くりケリをつけたような気もしますが、まあ曲のテーマが善良さなどという、愛でも勝利でも永遠でもない小さな小さな価値基準は、大事にしたいと思い続けています。

3歩以上歩くと相手ボールだったよね

部員じゃなくたってそれくらい知ってるよ

高級なコンパスを思わせる素早く華麗な動きです

わざと足踏んでニヤついてろよ

これは特別にあつらえた安全シューズ

見ろよ地を這う如きドリブルと

針の穴を通す音速パスの正確さ

自転軸はズレていくものだったよね

4万年スパンでも戻るのならまあいっか

それとも四季の移ろいで

悦に入ってる場合じゃないのかも

いつまでもあると思うなよ

地に足のついた暮らしとその地と足

地団駄踏めるだけまだマシだったねえなんて

そんな安いディストピア映画さすがに笑えない

想像してみよう

生きとし生ける全てのものが自ずから持つ

重力のラインはもれなく一つの点に集約される

与えられた振り付けで踊るしかないんだよね

隅っこで軸足は固定だけどそれなりに幸せかい

たまには誰も見てない場所で

気ままにキリキリ舞うのかい

偶然立ったピンスポットの下

急いで穴を掘り杭を打ち登記しなきゃ

軸足が地盤深く基礎に入ったそこの場所

支えてるのはどこの国籍

耐えているのはどんな性別

計算するのはどこの階級

呪いを吐くのはどんな性格

澱んでくのはいつの言説

諦めるのはどんな願望

捧げてるのは誰への哀悼?

騒々しくいこう

生きとし生ける全てのものが自ずから持つ

滑稽な外見を晒して歌ってみたり

喚いたり身震いしたり熱を持ったり

瞬いたり羽ばたいたり何度も交換したり

抱擁したりしていたい

想像してみよう

生きとし生ける全てのものの質量と熱量を

騒々しくいこう

偶然生きてる全てのものは騒げ 黙れ 騒げ

ソウゾウしてみよう

どこかで生きてる誰かが依って立てるものを

総体としての

物質が持つエネルギーが変わらないんだったら

価値は生まれてないんだとしても

それでもせめて善良ではいたい

“Pivot Foot” sung by jUn (Translation)

If you take more than three steps, it’s the other team’s ball, right? 

Even non-members know that much

Swift, elegant movements, reminiscent of a high-end compass

Go ahead and step on my foot on purpose, then smirk

These are specially made safety shoes

Behold, the ground-hugging dribble

And the pinpoint, sonic-speed pass accuracy

The axis of rotation is something that shifts, isn’t it? 

If it returns even after 40,000 years, well, whatever

Or perhaps, it’s no longer the time to be pleased with ourselves by the changing of the seasons?

Don’t think it will always be there

A life with your feet on the ground, and that ground and those feet

“At least we could still stomp our feet,” you say? I can’t laugh at such a cheap dystopian movie

Let’s imagine,

The lines of gravity that all living things inherently possess Invariably converge at a single point

We have no choice but to dance with the given choreography, right? 

In the corner, the pivot foot is fixed, but are you reasonably happy? 

Do you sometimes dance in a whirl where no one is watching? 

Under the spotlight you happened to stand in, 

You have to quickly dig a hole, drive in a stake, and register it

The place where your pivot foot is deeply embedded in the foundation, 

What nationality is supporting it? 

What gender is enduring it? 

What class is calculating it? 

What kind of personality is spewing curses? 

When did the discourse become stagnant? 

What kind of desires are you giving up on? 

To whom are you offering condolences?

Let’s make some noise,

Singing while revealing the comical appearances that all living things inherently possess, 

Shouting, shivering, getting hot, 

blinking, flapping, exchanging many times, 

And embracing

I want to do such things

Let’s imagine,

The mass value and heat value of all living things

Let’s make some noise,

All who happen to be alive, make noise, be silent, make noise

Let’s create,

Something that someone living somewhere can lean on

If the total energy of matter remains unchanged, 

Perhaps no value is created, but still, 

At least, I want to be good

忘備録 #01 “おもいの軸足(イントロダクション)”

まず、これまでの雑多なモチーフをまとめるにあたり、テーマを設定しようと思いました。歌詞を書くなどというチャレンジをしたことがほとんどなかったので、自分が何かを人に伝えようと思ったら、まず何を言おうと思うだろうか、と言う問いを最初に考えました。

そこで決めたのが、「誰にも軸足を踏まれたり蹴られたりしませんように」と言うフレーズです。そこからじゃあ人々にとっての「軸足」って何だろうと考え、軸足、さらに「足」というものが表象するものをテーマにしようと決めました。

そんな具合に「足」スタート地点に定めたところ、体のパーツシリーズでしばらく続けられるかも、などと気付き、とりあえず手持ちのネタを揉んでいけば3枚くらいアルバムが作れるかも、と思い描くようになりました。

「おもいの軸足」は、しみったれたマイナーコードの進行モチーフがあり、それに歌詞を乗っけていきました。ただ、まだ曲としての体裁をなしていない前半部分のみだったので、セカンドヴァース部分を展開させてみたいと思い、長調へ移ってみたことで、「そろそろ死ぬ」から「もうすぐ生む」に話が移り変わっていくことができました。

最後にそもそものテーマを配置して、最初くらいはご挨拶がわりに自分の下手くそな歌唱で頑張ってみようと決め、この曲は完成。と思っていたのですが、そこで一つ疑問が。

この曲では、「軸足」は各人が自らを規定する大切な価値や規範としての用語、つまりは「良いもの」のつもりで言葉を選びましたが、さて、これは他人にとっても同じく「良いもの」であるのでしょうか。弱者を罵ってないと自分のプライドを保てない人だっていくらでもいますもんね。その人の軸足だって軸足には違いないわけであって。

そんな問いが、2曲目の「軸足」に続くことになります。

“おもいの軸足(イントロダクション)”

死にそうな人

死にたい人

死んでも死にきれない人

もう死んでもいいほど幸せいっぱいな人々

もうすぐ産む人

産んでいいものかと悩む人

産みすぎてちょっとくたびれた人

そして産まれたての人

心を配って配り過ぎて

もうなんにも残ってない人

できればそんな彼女や彼が

誰にも軸足を踏まれたり蹴られたりしませんように

“The Axis of Thoughts (Introduction)” Translation

Those who are dying 

Those who want to die 

Those who can’t die even if they die 

People who are so happy they could die

Those who are about to give birth 

Those who are worried about whether they should give birth 

Those who are a little tired from giving birth too much 

And those who are just born

People who have given too much care 

And have nothing left for themselves 

If possible, may she or he 

Never have their axis of thoughts stepped on or kicked by anyone

忘備録 #00 はじめに

これまで30年ほど作りためた曲、モチーフ、コード進行などまとまりのあるものないもの、さまざまな断片を形にしようと思い、たぬきのような名前を借りて自主制作を始めました。

その後、初めてのアルバムを完成させてから約5ヶ月、取り組み始めてからは数年経っているので、すでに何を考え、何を工夫し、何に躓いたのか忘れつつあることに気づきました。

そこで、主に自分のための忘備録として、また、こんなサイトの端っこまでご覧くださる方には幾らかの興味を持っていただけるのではないかという思いもあり、各曲について、自分なりに文章で整理していきたいと思い駄文を綴ることとします。

あくまで忘備録的なので、文章はまあ雑なものです。考えている方向と受け取られる方向が違ってしまうかもしれない、と言う懸念も幾らかあります。まあそれでも残してみようと思った、ということでどうぞご理解ください。自分で何か気づけば随時修正していくと思います。

あと、更新は不定期であります。

ダイチュウくん

#03「真善美」、#09「考えてる葦」で歌ってくれたダイチュウくん(小中学校の同級生なので以下敬称略)は、高校の時に一緒に組んでいたラモーンズのコピーバンドで歌っていました。もう35年くらい前の話、老人の昔話みたいだな。(汗
高校を卒業してからはあまり交流なく、それぞれにバンド活動をやったりしていましたが、数年前に、ギターのニジオカくんが帰省した際に、スタジオで音を出してみようという話になり、それから森の作品制作に協力してもらったり、コピーバンド風にカバー曲を作ったりという流れになった次第です。
ダイチュウは結構荒ぶった感じに歌っても雑に聴こえない声だと思います。ビブラートやフェイク的な感じで流れを作るのが上手いんだと思います。あと、ほんの少し声にファニー味があるので、気取った風にならず愛嬌も感じられるのが好きです。
彼は現在2Weeksというバンドで活動しています。ツインギター編成で、雑に括るとハードロックという感じだとは思いますが、ダイチュウのボーカルで曲の重厚な感じがいい具合にポップに寄って、とっても面白いバランスになっていると思います。いつかみなさんに紹介できるといいな。
今回は、35年前の高校生バンド「PINHEAD」でのカバー曲を貼ってみます。この曲はダイチュウの提案です。なんがカラオケの十八番とか言ってた笑

りょうたさん

今回はボーカリストさんでなく、ビデオを作ってくれたりょうたさんをご紹介します。アルバム「おもいの軸足」リリースにあたり、実質タイトルトラックの「軸足」でビデオが作れないかと考え、ボーカルのじゆん君に相談したところ、弟さんが映像制作の仕事をされているとのこと。じゆん君もいつか弟さんと作品作りがしたいと考えていたそうで、挨拶がてらビデオミーティングをすると、3人で盛り上がってしまい(笑)、チームでワイワイやりとりをしながらビデオが出来上がりました。
撮影は二人の暮らす鹿児島で行いたいと思い調べてみたところ、垂水市にいい雰囲気のバスケット(3×3)コートを見つけました。管理をしている市役所の方にもお世話になり、コートとその周辺で1日かけて撮影を行いました。当日は天気が良くて良かったのですが、メインのじゆん君にとっては、スーツを着たり熱を帯びたコートに寝っ転がったりして、かなり不快指数が上がっていたようです。お疲れ様でした。
撮影、編集、監督を担ってくれた脇村亮太さんは、鹿児島県鹿屋市を拠点に映像制作を行なっている方です。作品はYouTubeなどでも観ることができますが、音楽系のビデオの他にも美術作家さんの作品やドキュメント、まちづくりやお祭りの記録など、多岐に渡ったお仕事をされてらっしゃいます。詳しくは是非Webサイトをご訪問ください。
WAKIMURA EIZOU http://wakimura-eizou.com
僕は自身のことをあんまり熱量の高くない人間だと自覚しているので、りょうたさんのように求心力が強く、行動力あふれる人物には憧れます。旅が好きだそうで、桜島の灰をかぶった車で知らない土地のガソリンスタンドに寄ると、鹿児島トークがはずむと言ってました(笑)。
またいつかの機会にチームを組みましょう。予約しておきますね。

「NIGIWAI -にぎわい」

シガキさん

彼のことはご存じの方も多いかと思います。今回「#04社会性」「#09考えてる葦」「#10表情筋」と3曲ボーカル/コーラスを担当してもらったシガキマサキさん。彼が最初のアルバムをリリースした当時、歌声一発でファンになったのですが、その頃の仕事絡みでコンサートに出演していただいたり、熊本市電の中で弾き語りをしてもらったり(割と無茶振りでした笑)と、こちらから積極的に彼にはアプローチしたことを覚えています。普段は音楽でもそれ以外でも、あまりこちらからの押しの強さを発揮できないんですが。したいんですが。
2枚のアルバム(「黄昏フリーク」「ハミングムーン」)と1枚のミニアルバム(「春の色」)1枚のシングル(「大丈夫」)を発表し、現在は教壇に立ちながら「ウイークエンド・シンガーソングライター(本人談)」として色んな場所で歌ってらっしゃいます。いつかまたアルバムを聴かせてくださいね。

「春の色」の弾き語りVer.です。歌声一発でどこかへ連れていかれちゃいますね。

シガキマサキ “春の色

ニジオカくん

今回のアルバムには1曲コーラスで参加してもらったのみですが、次作に向けて既に1曲歌ってもらっているニジオカミライさんです。さん付けで呼んでみましたが小学校からの幼馴染で、普段敬称付きで呼ぶことのない数少ない友人の一人です。
彼とは高校時代にコピーバンドを一緒にやっており(彼がギター、森がベース、ボーカルはここではまだ紹介していない#03「真善美」のダイチュウ)、数年前、東京に住む彼から、自分で曲作りをしている、ついては録音に協力してほしいと連絡がありました。面白そうだなと引き受けて、曲の構成作りやアレンジは任せてもらったので、コードを置き換えたりして好き放題弄り倒し、たまにやり過ぎとお叱り(笑)を受けたりしながらいくつかの曲を作ってきました。この作業で自分の好むアレンジの形など、発見/修正/再認識できたことが多くあり、なかなかに自分にとって実りの多い時間になった気がします。
彼はミュージックビデオもほぼ独力で制作しています。編集は一人、ほぼ独学でやったようですが、手作り感という工夫が溢れた映像で、楽しく視聴できると思います。よかったらどうぞ。

ニジオカミライ “自分事”

加えてこちらは森も出演しております。

ニジオカミライ “籠の外”

ゆきさん

今回「忘却」を歌ってくれた友紀さんは、古くからの友人です。昔よく遊びに行っていた彼女の住むシェアハウス(的なアパートですね。その頃はまだそんな言葉は使っていませんでした)で、みんなが集まり楽しく過ごしたことを覚えています。もう20年は前の話です。彼女はボーカリストとして積極的に活動していたわけでもないのですが、周りではネオアコなどの柔らかな印象の音楽を好む人が多かったこともあって、みんな友紀さんの穏やかな歌唱が好きだったと思います。
今回はネガティブなテーマの曲なので、依頼するとき少しの躊躇があったのですが、快く引き受けてもらい、楽しく録音できました。彼女の娘さんも声のキャラクターは違えどとても印象的なボーカリストなので、現在その若い彼女に歌ってもらうべく曲をああだこうだとアレンジしています。
今回はアルバムに収録した「忘却」をご紹介します。映像、写真など例によって友人たちに協力してもらい作った映像です。音は昨年の時点でのミキシングとなっています。昔集まっていた友人も写真の中に登場しています。

森分福 “忘却 sung by 友紀 (2023 Mix)”

じゅんくん

今日はじゆん(ジュン、と普通に読んで下さい笑)さんをご紹介します。彼は大学のサークル仲間でした。物腰が柔らかく、中性的な雰囲気を持っていますが、一旦歌い出すと表現スイッチが入るようで、なかなか爆発できない僕は、ああ、こういうキャラクターの人がボーカリストに向いているんだなあ、と思ったものでした。
熊本を離れて久しい彼、僕も20年くらい会っていなかったのですが、生真面目で少し哀感のある声が欲しいな、と思い連絡をとると、二つ返事でOKをくれて、すぐに熊本へと車を走らせてくれました。話が早い(笑
ボーカリストとして人の前で歌う活動は、なかなか時間もなく難しいようですが、サウンドクラウドに多くの曲をアップしてらっしゃいます。

いい声です。人のことを嘲ったり笑ったりしない声だと思います。

jUn “あいはね。あるいは、不可逆なドーナツの空白。”

あみちゃん

今日は#07「常緑樹」#09「考えてる葦」を歌ってくれたマスダアミさんを紹介します。熊本でベーシストとして演奏していた彼女、森はnahuelitoというバンドでご一緒していました。現在は東京在住で、Momi Buncho Labという名義で「文鳥のうた/文鳥のおるすばん」を発表してらっしゃいます。Amazonには、「文鳥界を席巻したアンセム(!)」とあります。今回アルバムジャケットの撮影にあたり、森はお気に入りのTシャツを着ようと思って、Momi Buncho Labが作っている文鳥Tを選びました。鳥好き仲間なのです。
鳥のTシャツを着ていると、スーパーのレジの方が話しかけてくれたりしてニコニコ過ごせるのでいいですよ。お勧めします笑。
マスダポドとマスダアミによる文鳥グッズ制作夫婦ユニット Momi Buncho Lab SHOP

文鳥界を席巻したアンセムがこちらです。

Momi Buncho Lab “文鳥のおるすばん”